ルヴァンカップ決勝の不思議。なぜか未来のスター候補が次々に躍動 (3ページ目)

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • photo by AFLO

 互いに持ち味を発揮するものの、得点には至らない。そんな展開のまま、両チームがひとりずつの退場者を出した死闘は、スコアレスのまま延長へ。そして迎えた、延長前半終了間際のことだった。

 鹿島は、田代有三とのパス交換で左サイドを突破した興梠慎三が、スピードに乗ったドリブルでペナルティーエリアに進入。丁寧なクロスをゴール前へ送ると、そこへ走り込んできたのは大迫である。

 絶好のクロスに大迫が右足をワンタッチで合わせると、ボールは難なくゴールへ転がり込んだ。

 当時プロ3年目の大迫は、まだまだチーム内でも絶対的な存在とはなり得ていなかった。J1でのゴール数も、3シーズン通算でようやくふた桁に乗せたばかりのころだった。

 それだけに、常勝軍団のストライカーとして責務を果たすそのゴールは、大迫という存在を広く知らしめ、彼自身にも大きな自信をもたらすものになったはずである。

 翌2012年の第20回大会決勝は、連覇を狙う鹿島と清水エスパルスの対戦だった。

 晴れの舞台で主役を務めたのは当時20歳、プロ2年目の柴崎岳である。

 偶然にも、この試合の直前にリーグ戦(J1第30節)でも顔を合わせていた両者の対戦は、アウェーの清水が2-1で勝利。その時点での順位も、清水が4位に対し、鹿島は13位と、前回王者は苦しい状況下で大一番を迎えていた。

 しかも、前哨戦ともいうべきその試合は、鹿島がボールポゼッションでも、チャンスの数でも上回るものの、得点につながらず、逆に一瞬の隙から失点して勝ち点を落としてしまう。鹿島の不調を象徴するような試合に終わっていた。

 若手を中心としたメンバー構成で勢いに乗る清水が有利――。そんな見立てが一般的だった試合は、実際、より長くボールを保持し、攻撃の回数を増やすという意味では、清水が攻勢に進めていた。

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