徳島がJ2首位を走る必然。スペイン人指揮官が積み上げてきたもの (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 松岡健三郎/アフロ●写真 photo by Matsuoka Kenzaburo/AFLO

「ボールを保持したい、という思いは一緒のチーム(同士の対戦)で、(そのためにFWとしても)まずは相手のボランチを消し、中を締めて、守備対応をすることが求められました」(徳島・清武))

 一方、東京Vも戦意は挫けていなかった。前線からはめ合い、カウンターを狙う。一触即発の様相を呈したまま試合は推移し、42分だった。徳島のFWが落としたボールに鋭く反応したMF藤田譲瑠チマがパスカットに成功し、そのままボールをFWにつけ、再び受けたボールを右足で左隅へ流し込んだ。

「(同点につながったパスカットは)ゆるくなったパスを狙っていました。前半は、相手に(ボールを)持たれることが多くて。前にプレスをかけたところ、2列目が遅れてワンタッチではがされていたので、マンツーマンで行こうと。後半はアグレッシブに戦うことができました」(東京V・藤田)

 後半、徳島は東京Vの真っ向勝負に、やや不利な形勢となる。ボールがうまくつながらず、プレスもはまらない。ポストをかすめるようなシュートを浴びるシーンもあった。

「首位である徳島を相手に、勇気を持って戦うことができたと思います。後半は前から行って、"崩し"まではできた。あとは、決め切るというところの質を上げるしかない」(東京V・永井秀樹監督)

◆「東京V・永井監督がJ2の戦いを語る」>>

 だが残り10分、総攻撃で勝ちにきた東京Vの陣形が均衡を失う。凌いだ徳島は、その隙を見逃さない。それはチームとしての練度の違いとも言えるか。

 後半41分、前がかりでプレスをかける東京Vの裏を狙い、徳島は左サイドにロングボールを通す。これを受けた西谷和希が運び、ペナルティエリア付近で1対2の形になる。その瞬間、西谷は右アウトサイドで浮いたパスを間に通そうとすると、これが相手DFの手に当たり、PKの判定になった。

 岩尾がPKを決め、徳島は1-2で勝利をものにした。

「pequeno detalle」

 リカルド・ロドリゲス監督は、勝因を「小さく細かい点」と語っている。東京Vとの差は、ほんのわずかだったが、それは日々積み上げてきた差だ。

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