すべてはジーコから始まった。
衝撃のJリーグ開幕戦ハットトリック

  • 渡辺達也●文 text by Watanabe Tatsuya
  • 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

 今となってはJリーグの常識になっていることだが、そうやって鹿島は一歩、また一歩とプロのクラブへと成長していった。フロントがハード面を整備し、チームスタッフが練習、試合に向けて準備する。そして選手は試合で結果を出す。それぞれの仕事をお互いが尊重することで、チームに結束力と一体感が生まれる。そんな関係を大事にしていた。

 プロサッカー選手としての勝利に対する執着心は、言葉だけではなくプレーで見せつけた。衝撃だったのは1993年5月16日、40歳で迎えた鹿島スタジアムでのJリーグ開幕戦だ。

 相手はイングランドの世界的ストライカー、ガリー・リネカー率いる名古屋グランパスエイト。メディアは"ジーコVSリネカー夢の対決"と煽った。しかし、試合は予想外の展開になり、ジーコの独り舞台となった。

 前半25分、強烈なミドルシュートで先制点を決めると、前半30分にも芸術的なフリーキックで2点目。後半18分にもアルシンドの右からのクロスをボレーで合わせ、Jリーグ初のハットトリックを達成した。試合は鹿島が5-0で快勝。リネカーを完全にわき役へ追いやってしまった。

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