オシムに心酔していた阿部勇樹。自らの移籍についても「相談した」 (3ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・構成 text by Sato Shun
  • 甲斐啓二郎●撮影 photo by Kai Keijiro

 しかし、オシムから、阿部への褒め言葉は一切なかった。

「(オシムから)『よくやっているな』とか『いいプレーだったな』とか、一度も言われたことがないですね。オシムさんが理想としているものがものすごく高いので、そのレベルに行っていなかったんだと思います。

 ただ、言葉で褒められたことはなかったけど、そういう空気は伝わってきていました。試合に勝ったあと、オシムさんと必ず握手していたんです。その握手が『よくやったな』と言われているのかなって(勝手に)思っていた。そのシーンがすごく好きだったので、毎試合勝って(オシムと)握手したいな、と思っていました」

 2003年シーズン、阿部はオシムと何度も握手することができた。同時にこの時、阿部はあることを確信したという。

「自分が、(プロの選手として)『よくなっているな』『成長しているな』って実感していました。一方で、まだまだ(オシムから)教えてもらうこと、(自らが)やれることがあるな、とも思っていました」

 オシム体制となって2年目の2004年シーズン、阿部は24試合に出場し、5得点を決めた。チームはファーストステージこそ7位だったものの、セカンドステージは2位になった。

 翌2005年シーズンは、33試合に出場し、12得点をマーク。阿部は、ベストイレブンに選出された。チームも、1シーズン制となったリーグ戦で4位という結果を残し、ナビスコカップ(現ルヴァンカップ)では見事に優勝を飾った。阿部は、同大会でも10試合に出場して5得点を記録。J発足後、クラブ初のタイトル獲得に大いに貢献した。

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