2019.11.11

鳥栖、J1残留へ大きな一歩。
ズシリと重いベテラン豊田陽平の言葉

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by KYODO

「90分間のマネジメントで、(金)明輝さんは考えている監督ですね」

 サガン鳥栖のエースストライカーとして在籍10年目、34歳になる豊田陽平はそう説明している。今シーズン、豊田は途中出場が多くなった。しかしJ1リーグ98得点の選手が出番を待てることが、このチームの地力なのかもしれない。

「試合途中から入って、パワーを与えられる選手がほかにいるのか? そう考えたときに、『自分がやります』と。(味方が)疲れてきたところでの穴埋め、もしくは流れを変える。そこは大きな仕事になってくると思います。明輝さんに(途中出場で)求められるのは、ゴールをするだけではなく、どれだけ相手に圧力をかけ、味方を楽にできるか。チームのための犠牲精神というか……」

松本山雅に勝利し、サポーターに挨拶をするサガン鳥栖イレブン 11月10日、駅前不動産スタジアム。J1リーグ15位のサガン鳥栖は、17位の松本山雅を迎えていた(16位がプレーオフ、17、18位が自動降格)。両者の勝ち点差はわずか2。つまり、この試合でひっくり返る可能性があった。

 そこで、鳥栖を追う松本の試合の入り方が注目されたが、プレー強度は低く、技術的な拙さも目立った。完全に受けて立ってしまい、鳥栖に押し込まれた。

「ホームの雰囲気に少し飲まれてしまったかもしれない。過緊張というか、考え過ぎてフィットせず、球際も強さを見せられなかった。(鳥栖との)経験値の差のようなものも出た」(松本・反町康治監督)

 優位に立った鳥栖は、高い位置でボールをつなげ、球際でも負けない。押し込んだ形を作って、得点は時間の問題になった。右からのクロスがエリア内でこぼれたボールに、小野裕二がすかさず反応し、鋭いシュートでネットを揺らすが、これは直前のプレーでハンドを取られた。

 しかし13分、敵陣でのFKだった。ゴール左から小野が右足で蹴ったボールを、ニアサイドに入った金井貢史がヘディングで競り勝ち、先制に成功する。

 乾坤一擲(けんこんいってき)の残留戦、鳥栖は戦力と監督采配で上回っている。