イニエスタが守備に全力疾走。関西ダービーは両軍の今後の迷走を暗示 (3ページ目)

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by Getty Images

 しかも、最後にパトリックに寄せていたのはそのフリーキックでキッカーを務めたイニエスタである。彼が全力疾走で守備に戻らなくてもいい戦い方を前提にしているのであれば、やはり山口蛍プラスもうひとりでイニエスタのカバーをする必要があるだろう。

 こうしたトランジションの遅さに加え、そのリスク管理が為されていなかったことも、ヴィッセルの課題のひとつと言える。

 試合後、フィンク監督は「ボール支配率が平均54%あるチームに対して、今日の我々は57%を記録し、相手のエリア内にも24回入ることができた」と語り、スタッツをエビデンスに自らのチームの攻撃を評価した。

 たしかにこの試合のヴィッセルは、ボール支配率のみならず、シュート20本を記録して13本のガンバを上回った。さらに、後半からシステムを4-4-2に変更してボールを取り戻そうとしたガンバに対しても、それを許さなかった。

 ただし、その割にはヴィッセルがゲームを支配していた印象は薄く、むしろ指揮官の戦術は、攻守ともにまだ浸透していないと見るのが妥当な内容だった。すでに就任1カ月半が経過しているだけに、この状態が続けば、いずれその手腕に疑問の声が挙がることになるはずだ。

 フィンク監督は「来週はうまくいけば新加入DF2人も加わるので、ここから勢いをつけて前に進みたい」と意気込んだが、この試合でデビューしたGK飯倉大樹、トーマス・フェルマーレン、ジョアン・オマリを加えた守備陣を立て直せるかどうかは、監督の手腕次第と言える。

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