識者の多くが降格候補に挙げた大分トリニータがいまだ上位にいるわけ

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 大分トリニータの勢いに、かげりが見えている。

 大分は今季、J1昇格1年目にして開幕戦で鹿島アントラーズを、それもアウェーで下したのを皮切りに、スタートダッシュに成功。第11節までに7勝2敗2分けで勝ち点23を積み上げ、最高3位まで順位を上げていた。

 しかし、第12節からの5試合では、2敗3分けとしばらく勝利から遠ざかり、第10、11節を最後に連勝もなし。成績を見る限り、大分の勢いは失われてきている。

 直近のJ1第20節、川崎フロンターレ戦でも、前半は互角以上の戦いを繰り広げたものの、結局は1-3で完敗。後半早々に先制されながら、すぐに同点に追いついたまではよかったが、時間の経過とともに力の差を見せつけられる結果となった。

 大分を率いる片野坂知宏監督は、「何とか前半をしのぎ、後半も先制されたが、追いつくことができ、粘り強く戦っていたと思う」と語り、まずは選手たちを称えつつも、険しい表情を崩さず、こう続けた。

「ただ(同点に追いついた1-1の状況で)一瞬、自分たちの緩みが出たところで、相手のクオリティに上回られて仕留められ、非常に難しい展開になった。川崎のような強い相手に対し、強度という面でも90分維持しなければ、勝ち点を取るのは難しい」

 同点ゴールを決めた一方で、失点につながるイージーなパスミスを犯したFWオナイウ阿道が、「(川崎は)個人個人の基礎的な技術がしっかりしている。そこは差を感じた」と語ったように、トラップや切り返しといったボールタッチひとつ取っても、川崎の選手に比べると、大分の選手は繊細さに欠け、選手個々の技術レベルの差は明白だった。

「選手層の厚さでも、(プレーの)クオリティでも、川崎はトップで、我々は一番下の18位」(片野坂監督)にもかかわらず、ミスまで重なったのでは、完敗もやむなし。昇格1年目の快進撃が、そうそう長くは続かないのも当然のことなのかもしれない。

 とはいえ、だ。

 第20節終了時点で5位につける大分は、勢いだけでこれほどの成績を残しているわけではない。川崎戦にしても、敗れはしたが、それを証明するのに十分な試合内容だったのではないだろうか。

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