スペインの名門で羽ばたく清水和也は日本フットサルのスターになる (4ページ目)

  • 河合 拓●取材・文 text by Kawai Taku
  • photo by Kawai Taku

 オフに帰国した清水は、すみだのトレーニングに参加していた。そこで清水は、普段から彼らと一緒にプレーしているかのような、スムーズなコンビネーションを見せるとともに、強烈なシュートなど個の力でゴールネットを揺らした。「まだ始動したばかりですから」と、本調子ではないと言うものの、1年ぶりにプレーしたすみだの選手たちにとっては、その成長ぶりも良い刺激になっていた。

 スペインでの2シーズン目を前に、Bチームで掲げる目標は昨季の約2倍となる30ゴールだ。そして、よりトップレベルに「慣れる」ことを、もうひとつの目標に掲げた。

「スペインは、個々のレベルが高いです。でも僕自身は全然やれないことはありません。想像していたよりも、『あれ? 意外とできるぞ』という感じでした。もちろん順位が決まっていない時やプレーオフの大事な試合は、僕が出場した2試合とは圧力も違うでしょう。そういう意味では強度などに慣れることが、テーマのひとつになると思いました。プレースピードなども2部と1部では、やっぱり差があるので」

 スペインに到着した直後には、生活のリズムや食事にも悩まされたという。それでも、徐々に言葉を覚え、周囲と意思疎通が図れるようになり、ストレスは軽減されていった。

フットサル日本代表を引っ張り、来年のW杯での活躍が清水には期待されているフットサル日本代表を引っ張り、来年のW杯での活躍が清水には期待されている 元来、明るくポジティブな性格である。食事が口に合わなかった際に備えて、清水は日本から米と炊飯器を持っていっていた。ある時、炊飯器でご飯を炊き、それを食べていたら、同じ部屋で生活するチームメートも興味を示したという。彼らに日本のご飯を食べさせると、「これは美味い」と気に入った。そして、彼らは清水がいない時に、こっそり清水の非常食を食べてしまったという。

「炊飯器にある文字も、日本語しか書いてないのに、どうやって炊けばいいのか覚えているんですよ。しかも、普段は食後にすぐ食器を洗ったりしないのに、日本のコメを食べたあとだけは、すぐに食器を洗って僕に気づかれないようにするんです(笑)。おかげで僕が食べる分がほとんどなくなりましたよ」と、笑い飛ばした。この豪快な性格も、海外向きだろう。

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