誤審は関係ない。浦和レッズの問題はゴールの匂いが感じられないこと

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 いつの間にかJリーグにも、VARが導入されていたのか。

 そんな錯覚に陥りそうになったほどの、ドタバタ劇だった。

 横浜F・マリノスの1点リードで迎えた59分、ゴール前に抜け出した遠藤渓太のシュートを、逆サイドに詰めていた仲川輝人が胸で押し込んで、追加点が生まれる。

 しかし、直後に浦和レッズの選手たちがオフサイドを猛烈にアピール。すると、レフェリーはインカムを使って何やら話し始め、副審にも確認を求めた結果、なんと、判定は覆り、オフサイドとなったのだ。

納得のいかない判定に対して審判に詰め寄る槙野智章納得のいかない判定に対して審判に詰め寄る槙野智章 15年以上Jリーグを取材しているが、一度決まった判定が覆ったのは、初めて見る光景だった。VARの導入により、ワールドカップや先のコパ・アメリカでは頻繁に見られたものの、JリーグにVARが導入されるのは2021年になる予定だ。ならば、映像確認によりゴールかオフサイドかを判断することは、できないはずである。

 ところが、一度は認められたゴールが、オフサイドとなったのだ。横浜FM側が激怒するのは当然だった。

 すると、横浜FMのベンチ前で激しい抗議を受けたレフェリーは、再び判定を変えてしまう。仲川のゴールが再度認められたのだ。試合はおよそ9分の中断を経て、浦和のキックオフで再開された。

 映像を確認すれば、紛れもない誤審だった。

 仲川がオフサイドの位置にいたのは明らかで、浦和の選手はもちろん、横浜FM側にもオフサイドだと認めていた選手がいたと言う。仲川と競り合った宇賀神友弥のオウンゴールという見方もあるが、記録上は仲川の得点になっているのだから、その見解も当てはまらない。

 ただ、ここで問題なのは、レフェリーが曖昧な対応を取ってしまったことである。サッカーにはミスジャッジがつきもので、VARが導入されていない以上、誤りは正せない。とりわけ、一瞬の判断が求められるオフサイドは、もっとも難しいジャッジである。

 たとえミスであっても、毅然とした態度で判定を変えずにいれば、ここまで問題にはならなかっただろう。判定に自信を持てないなかでの優柔不断な対応が、前代未聞とも言える混乱を招いてしまったのである。

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