2019.07.03

世界でもレアな存在、車屋紳太郎。
左利きの右サイドバックが面白い

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by AFLO

 J1リーグ17位対2位。だが、ホームのジュビロ磐田は強者・川崎フロンターレ相手にうまく戦っていた。前半の途中からペースをつかみ、20分を過ぎたところからロドリゲスが4回、山田大記が1回、川崎ゴールを脅かしていた。川崎のGKが名手チョン・ソンリョンでなければ、先制点を奪うことができていた可能性が高い。

 流れが変わったのは、山田が惜しい左足シュートを枠外に外した直後になる。川崎は、サイドチェンジを含む大きな展開から大島僚太の足元にボールが収まった。例によって5バックで守りを固める磐田。大島へのプレッシャーも、後ろに重心がある構造上、まるでかかっていない状況にあった。

 日本代表からしばらく遠ざかっているとはいえ、日本屈指のゲームメーカーだ。5バックが並ぶ左の端(川崎側から見て右の端)にスペースがあることを、大島は瞬時に視界に捉えた。

 サイドチェンジのボールが蹴り込まれた先で構えていたのは車屋紳太郎だった。右サイドバック(SB)として出場するのは今季3試合目だという。

右サイドバックで先発を続けている車屋紳太郎(川崎フロンターレ) 車屋といえば、左SBのイメージが染みついている選手だ。何と言っても左利きだ。こう言ってはなんだが、こちらの長い取材経験のなかでも、左利きの右SBに遭遇した記憶はまったくと言っていいほどない。これは貴重な光景に値する。

 車屋がケガで休んでいる間に、左SBの代役として出場していた登里亨平が比較的安定したプレーをしていた。その登里をサブに追いやるより、異例ながら車屋を右SBで起用したほうが何かと得策だと、鬼木達監督は考えたのだろう。

 今季これまでの川崎と、昨季までの川崎と、最大の違いは右SBにある。2シーズン連続(2017年と2018年)でJリーグのベスト11に輝いたエウシーニョを、今季、清水エスパルスに放出。その穴を川崎はこれまで埋めることができずにいた。マギーニョ、馬渡和彰、鈴木雄斗、守田英正らが務めてきたが、どれもイマイチ。右サイドから安定した攻撃ができずにいた。