Jリーグ新プロジェクトの狙い。
移籍金を10倍にするために必要なもの

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi

Jリーグ育成プロジェクトの未来 後編

 Jリーグが舵を切った新しい育成プラン「プロジェクトDNA」。このプロジェクトは、選手や指導者の資質を見出し育てて将来につなげ、ワールドクラスの選手を輩出することを最大の目標として今年2月に立ち上げられた。

「今回のプロジェクトを進めるうえで、Jリーグとして重視すべき点は、各クラブに投資利益の視点をもたらすことです。

 各クラブはすでに育成のために労力を注いで金銭も含めた投資を行なっていますが、その見返りがどこで得られるのかを提案したうえで、Jリーグとして具体的な施策を用意してそれをサポートする。私たちは、そのための戦略を立案し、環境整備も行なっていくつもりです」
 
 そう語るのは、「プロジェクトDNA」で重要な役割を担う、フットボール企画戦略ダイレクターのアダム・レイムズだ。

 ここで言う「各クラブの投資利益」とは、主にふたつの意味がある。ひとつは、各クラブのアカデミーの取り組みと成果に応じて、Jリーグがサポートする配分金(育成支援金)。もうひとつは、優秀な選手を安定的に輩出することによって得られる移籍金収入だ。

 前者は、現在各クラブのアカデミーダイレクターとも詳細を協議しているという「アカデミー・パフォーマンス・プラン(APP)」の策定と実行がカギを握る。これは、各クラブのアカデミーでの取り組みについての実行計画書のようなもので、それを定期的に提出することで、クラブとJリーグが進捗状況を共有しながらJリーグが適切なサポートをし、その取り組みを、いずれは配分金の評価基準に紐づけるという計画だ。

「これまでは各クラブがアカデミーでどのような取り組みをして、どこまで実行できているかをJリーグ側が十分に把握できていませんでした。しかしAPPを導入することにより、進捗状況を把握できると同時に、Jリーグはそれぞれのクラブに適切なアドバイス、サポートができるようになります。

 私たちがいくつかのクラブの社長やアカデミー関係者にこのプランを説明したところ、非常に好反応でした。実際にAPPが実行に移れば、各クラブが求めているもの、必要とされているものが明確になり、各アカデミーとしても望ましい方向性での活動が実現し、モチベーションアップにもつながるはずです」(アダム・レイムズ)

 そして、投資利益を考えるときにより重要になってくるのが、後者の移籍金収入だ。

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