2019.05.31

「元バルサと言わないで」。
鳥栖低迷脱出の原動力、クエンカの成長

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 松岡健三郎/アフロ●写真 photo by Matsuoka Kenzaburo/AFLO

復調したサガン鳥栖で攻撃の中心になっているイサック・クエンカ「”元バルセロナのクエンカ”ではなくて、今の自分をもっと知ってもらいたい。自分のプレー、試合での活躍でね。日本に来てプレーしてみて、とても気に入っているから!」

 サガン鳥栖のMFイサック・クエンカ(28歳)は明るい声で、その気持ちを吐露している。

 クエンカは、名門バルセロナの下部組織で育った。2011-12シーズン、ジョゼップ・グアルディオラ監督に率いられて世界最強を誇ったバルサのトップチームで、颯爽とデビューを果たす。カップ戦も含めて30試合に出場、4得点を記録した。スペイン国王杯、クラブW杯の優勝に貢献。チャンピオンズリーグでは得点こそなかったものの、4アシストを刻み、右サイドを疾走するドリブルは鋭利だった。

 その後はアヤックス(オランダ)、デポルティボ・ラ・コルーニャ(スペイン)、ブルサスポル(トルコ)、グラナダ(スペイン)、ハポエル・ベエルシェバ(イスラエル)などを転戦。異なる国のクラブでプレーし、適応力を身につけている。その拠りどころは、やはりバルサ仕込みの技術なのか。

「イサックが持つと、ボールを取られない」と、そのキープ力は際立ち、鳥栖でもひとつのアドバンテージになっている。

 Jリーグ1年目となるシーズン、膝の痛みのせいで、開幕は出遅れた。しかしその後は定位置を確保し、ここまでリーグ戦11試合に出場、2得点を記録している。

――何を見据えて、日本にやってきたのか?

「どこにいようとも、毎日、少しずついい選手になっていく。それが楽しみだよ。成長し、技術を改善させたい」

 クエンカは顔をほころばせて答えた。はたして、バルサで得たものは今も何か残っているのか。率直に訊ねてみると、クエンカは「うーん、それは見ている人に決めてもらうべきかな」と言って、肩をすくめた。

「(たくさんの国でプレーしてきたので)なにより、能力よりも適応することが大事だと思う。プレー環境に適応し、年齢やコンディションを考え、自分の技術をアップデートできるか。それぞれの選手でシチュエーションが違うので、一概には言えないけどね」