久保建英は見ているだけで面白い。
異質だからこそ一見の価値がある (2ページ目)
「先制されると、我々としてもバランスを崩していかないといけない部分もある。そうなると余計にFC東京の強みが出るかなと思っていたが、そういう展開になってしまった」
松本の反町康治監督が敗因として挙げたように、この先制点こそが、試合の趨勢(すうせい)を決する重要なターニングポイントとなった。
敵将の言葉にあるように、先制点を手にした後半のFC東京は、本来のスピードを生かした戦いを演じられるようになった。そのなかで久保のプレー機会も増加し、まさにワンマンショーと呼べるような華麗なプレーを連発した。
60分に右サイドからペナルティエリアにカットインしてファーを狙ったシュートは惜しくもポストに阻まれるも、63分には絶妙なパスでディエゴ・オリヴェイラの決定機を創出。さらに76分には味方のシュートのこぼれ球を拾ってエリア内に侵入。相手DFに倒されて、PK奪取に成功した。
「蹴りたかった」というPKはディエゴ・オリヴェイラに譲り、この日もゴールは生まれなかったが、全ゴールに絡む活躍で、2−0の立役者となった。
結果につながるプレーもさることながら、久保のプレーは見ているだけで面白い。
足裏を使ったドリブルで敵を引きつけ、そのままアウトサイドで狭いスペースにパスを通したり、頭上を越すドリブルで相手を翻弄したり。その妙技の数々は、アスリートとしての能力が重宝される現代サッカーにおいて、明らかに異質であり、だからこそ一見の価値がある。
もちろん、久保はそうした技術をひけらかすだけでなく、チームの歯車として献身的なプレーもいとわない。ピッチを横断しながらプレスを続けたシーンには、スタンドから大きな拍手が送られている。
その圧巻のパフォーマンスに、敵・味方かかわらず、称賛の言葉が送られた。
「建英にはなんとか1点獲ってほしいと思いました。それくらい今日はキレがあり、攻撃の起点になっていた」と、長谷川健太監督は手放しで称賛し、敗れた反町監督も、「相手を見て判断をぎりぎりで変えられるところとか、少し日本人離れしたところがある。質の違いを見せつけられた」と、脱帽するしかなかった。
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