理想と現実の間で揺れる松本山雅。反町監督に託された難しいかじ取り (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 簡単にクリアやロングボールに逃げるのではなく、パスをつないで攻撃に転じる。その姿勢自体は非難されるべきものではない。だが、結果として、それが裏目に出ている面があることも否定できない。ボランチとして、攻撃の組み立て役を担うMF宮阪政樹は言う。

「ボールを奪ったあとの、ひとつ目のパスが課題になっている」

 松本の2失点を振り返れば、いずれもFC東京の攻撃を一度は止めながら、そこから攻撃に移ろうとしてボールを奪われたことに端を発している。

「勝ち点を取るには、現実を見てやらなければいけない。できることに重点を置いてやり、それで勝ち点を取れるようになってから、課題に取り組むほうがいいのかもしれない。ボランチとしては、そこは考えなければいけない」

 宮阪が悩まし気に話すように、できないことを無理にやろうとして、むざむざ失点を重ねるくらいなら、FWレアンドロ・ペレイラの高さや、前田のスピードを生かしたロングボールに"逃げる"ほうが、ひとまずは得策なのかもしれない。

 実際、松本は時間の経過とともに、ボールを保持して敵陣に入る場面を増やしたが、「(攻めていても)最終的にバックパスしてしまったり、サイドでノッキングするような場面が多かった」とは、キャプテンのDF橋内優也。また、MF高橋諒の「(攻撃を)やり切らず、もったいない失い方があった」という言葉どおり、じっくり攻めている、と言えば聞こえはいいが、攻め手を見つけられないまま、パスをつないでいる間にどこかでミスが出てしまう、というシーンも目についた。

 前半のうちに先制点を与えたことで、後半は攻勢に転じた松本は、トータル10本のシュートを放ち、量のうえではFC東京の7本を上回った。だが、その質はどうだったのか。

 本当の意味でのチャンスと呼べるのは、56分にレアンドロ・ペレイラが、84分に交代出場のFW永井龍が、いずれも右サイドからのクロスにヘディングで合わせたシュートシーンくらいだろう。反町監督が語る。

「(後半の選手交代によって攻撃が)活性化され、リズムが変わったが、それが決定打につながったのか。フィニッシュがペナルティーエリアの外になってしまうのは、今の我々を象徴している」

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