Jリーグ序盤、福田正博が気になる「王者川崎の足踏み」の原因を探る (2ページ目)

  • 津金壱郎●構成 text by Tsugane Ichiro
  • photo by AFLO

 今季はそうした上積みとしての戦力が誰になるのかが、まだ見えてこない。昨年までのチームになかった強みを持つレアンドロ・ダミアンに期待していると思うが、現状はレアンドロ・ダミアンの良さを生かそうとすると、チームとして川崎が持っている良さを生かしきれなくなる状況と言えるだろう。

 右サイドバックも気がかりなポジションだ。清水エスパルスに移籍したエウシーニョの抜けた穴を、マギーニョや馬渡和彰が埋めているが、まだまだエウシーニョの域には達していない。エウシーニョは賢くリスクをかけて右サイドの攻撃を活性化させたが、マギーニョも馬渡も、まだまだ噛み合っていない。ここの連係がスムーズになれば、さらに多くのチャンスを作りだせるようになっていくはずだ。

 今季のJ1が面白いのは、ボールを保持して主導権を握るスタイルのチームが増えていることだ。川崎をはじめ、名古屋グランパス、横浜F・マリノス、コンサドーレ札幌、ヴィッセル神戸、大分トリニータなどが、ポゼッションとパスワークを武器に勝ち点3を狙うサッカーをしている。堅守速攻のチームとの対比が明確になることで、その面白さがより伝わりやすくなったと言える。

 そのなかで、J2から昇格してきた大分が、3勝1敗の開幕ダッシュを決めた。アウェーでの開幕戦で鹿島アントラーズを破って勢いに乗ったが、4年前まではアマチュアだった29歳の遅咲きストライカーの藤本憲明が4戦5得点と快進撃の象徴になっている。

 昨年J2で最多得点の攻撃力はJ1でも通用すると思っていたが、守備は不安を残していた。しかし、得点力をそのままに、守備をきっちり改善してきた。昨年のメンバーから半分が入れ替わったチームに、戦術をうまく落とし込んだ片野坂知宏監督の手腕は見事としか言いようがない。長いシーズンで負けが込む時期もあるかもしれないが、上位に食らいつきながら、リーグをかき回していってもらいたい。

 今シーズン最大の注目クラブである神戸は、2勝1分1敗とまずますのスタートを切った。昨年末にダビド・ビジャの加入は決まっていたが、CBや中盤の戦力が足りていないとなれば、素早く補強した。CBにダンクレーを獲得した時点で、普通なら補強は終わりそうなものだが、手を緩めないのが神戸のすごさだ。セルジ・サンペールの獲得は、彼らの掲げる「バルサ化」への本気度の表れ。さらに「あの選手が加われば」「このポジションにあの選手が入れば」という想像を駆り立ててくれるチームになった。

 神戸にとってダンクレーの獲得は大きい。守備だけではなく、縦パスを前線に入れる技術と判断力は、攻撃的なサッカーをするチームには欠かせないもの。当然、対戦相手もそこは研究してくるため、もうひとりのCB大崎玲央が狙われることになるが、それだけに彼の成長は必要不可欠になってくる。

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