現役引退の小笠原満男が被災地で語っていた「サッカーと復興」 (3ページ目)
――『東北人魂』の活動がいい形で芽生え始めているようですね。ところで、シーズン中はもちろん、大事なオフを削ってでも、小笠原選手が『東北人魂』の活動に励む原動力はどこからきているのでしょうか。
「ひとつはっきり言えるのは、地元だから、です。正直に言えば、他の地域、例えば、九州や四国で同じような活動はできなかったと思います。阪神淡路大震災(1995年)のあとも、中越地震(2004年)のあとも、自分は何もできなかったですから。やはり今回は地元で起こったことだし、お世話になった人たちが困っていたり、大変な思いをしたりしている。毎回(地元に)帰ってくる度に、そうした苦労をしている姿を間近で見てきていますし。そうしたら、何か力になりたい、恩返しをしたいっていうのは当たり前というか。地元だから、そういう気持ちが自然と沸いたんだと思います」
――『東北人魂』の活動を通して、小笠原選手自身、何か変わったことはありますか。
「何かが変わったというより、なんていうか......(自分は)今までいろいろな人に支えてもらってサッカーをやっていたんだなぁ、ということを改めて実感しています。震災直後から、いろいろな方にサポートをしてもらったり、さまざまなことを多くの人たちにやってもらったりしていますからね。だからその分、今は(自分が)みんなに恩返しをしていかなきゃいけないな、と思っています。いつも、助けてもらってばかりではよくないですからね。どこで、誰が、何をしてくれたのかはわからないので、僕のことを必要としてくれて、声をかけていただいたら、できる限りいろいろなところに出向いて行くつもりです。恩返しというか、感謝というか......、やはり助けてもらったり、協力してもらったりしたことに対して、お礼をしていかなければいけないな、と思っています」
――今後の『東北人魂』の活動については、どういったことを考えていますか。
「『支援の継続性が大事』ということがよく言われていますけど、個人的な考えでは、一日でも早く復興して、支援なんてなくなるのが、いちばんの復興だと思っているんです。だから、そういう日が早く来てほしい。だけど、そうなるまでは、まだまだ時間がかかりそうですけどね......。『東北人魂』の今後については、自分がどうしたい、こうしたい、というのではなく、この会の選手みんなの意見を聞いて、みんなで話し合っていきながら、いろいろなことを展開していきたいと思っています。今回も、イベントの前日とかにみんなでご飯を食べていたときに、たくさんのアイデアが出てきたりしたんです。なかでも『面白いな』って思ったのが、秋田と盛岡と福島のチームがJ3に加入することになったので、『東北人魂』とそれらのチームとで、東北で試合をしたいね、という話。東北出身の選手たちが、東北のチームと試合をするっていうのは、すごくやる意味があるんじゃないかって、盛り上がったんです。自分もそう思うし、やはり『東北』っていうのを大事にしたい。『東北人魂』が日本代表と試合をするっていう案も出ていたけど、東北のクラブと試合をするほうが『東北人魂』らしいかなっていうのはあるし、地味なオレらっぽい(笑)。実現できたらいいなぁ」
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