パスは全部愛情つき。広島ひと筋19年の森﨑和幸、最後のメッセージ (3ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 そのプレーにけっして派手さはない。華麗なスルーパスを通すわけでもなければ、豪快なミドルシュートを放つわけでもない。ましてや、スピードを活かしたドリブルで突破するわけでもない。ただ、ショートパスにしても、ロングパスにしても、どれもが正確でミスがない。久々に見た森﨑のプレーに、あらためて感嘆の声を挙げた人も多かったはずだ。

 本人に「自分はどんなプレーヤーだったか」を聞けば、「たまに自分のプレー映像を見返すと、自分のよさって見ている人には理解しにくいだろうな、とも思うんですよね」と話してくれた。

「たとえば、ボール奪取ひとつとっても、周りの選手を動かして、自分のところでボールを奪えるように指示していたりする。そういうところから説明しないと、僕のプレーってわかってもらえないと思うんです。簡単にボールを取れているように見えるかもしれないですけど、そこにはいろいろな伏線だったり、意図がある」

 それを感じ、知るからこそ、同じピッチに立ったチームメイトは、森﨑のプレーを称賛するのだろう。名古屋戦の後、佐々木翔はこう表現してくれた。

「(試合には勝てませんでしたけど)後半になって、あれだけボールを保持して、ボールを動かしながら、押し込めたというのは、カズさん(森﨑和幸)がいたからだと思います。ひとつひとつのパスにメッセージがあるのがカズさん。ショートパスもロングボールも全部、愛情つき。それが本物の質というものなのかなと、あらためて感じました」

 森﨑とは広島で5年間プレーする柏もこう語った。

「(今日の試合では)すごく深いタックルだったり、カズさんらしいプレーが随所にありました。パスにしても、どっちの足に出しているか、あとはスピードだったりでも、どういう意図で、どういう状況なのかが理解できる。そういう意味で、(今日の試合では)カズさんらしいボールの出し入れだったり、時間の使い方を感じた」

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