2018.09.07

イニエスタがプレーで伝えている
「バルサにあって日本にないもの」

  • 津金壱郎●構成 text by Tsugane Ichiro photo by Getty Images

福田正博 フォーメーション進化論

 あらためてイニエスタのすごさに驚いている。バルセロナ時代のイニエスタのプレーを何百回と見てきたが、実際にJリーグで見せる、底知れないすばらしさに畏敬の念さえ抱いている。

Jリーグデビュー後、注目度が上がり続けているイニエスタ Jリーグ初得点となったジュビロ磐田戦で見せたトラップからのシュートも、2点目となったサンフレッチェ広島戦での豪快なミドルシュートもすばらしいものだったが、私がさらに驚かされたのは横浜F・マリノス戦で見せたロングシュートだった。

 バルセロナ時代のイニエスタは、ロングシュートどころか、ペナルティーエリア内でもシュートを打たずに、パスを選ぶシーンがよくあった。「なぜ打たないんだ?」と思うこともあったが、バルサにはメッシやスアレスという圧倒的な数のゴールを量産する超一流アタッカーがいたため、より高い確率でシュートが決まるプレーを選んでいただけだろう。

 そのイメージが強かっただけに、ロングシュートには驚かされたが、チームを移籍して、一緒にやるメンバーが変われば、アプローチも変わるということだ。勝つ確率をもっとも高めるために、バルサ時代は無理してシュートを狙う必要はなかったが、ヴィッセル神戸では自分がやるべきプレーの選択の幅が広がっていると感じているはずだ。

 サッカーは、得点を決めることが最大にして最終目的のスポーツであるため、プレーを選択するときに最優先するのはシュートだ。自分がシュートしても決まる確率が低ければ、より得点の確率が高まるプレーを選択していく。これが原理原則にあるのだが、イニエスタのロングシュートも、その原理原則に従ってプレーを選択したということになる。

 私が現役時代に一緒にプレーしたチキ・ベギリスタインも同じだった。チキはバルサやスペイン代表で活躍し、1997年から99年に浦和レッズでプレー。引退後はバルサでディレクター職をつとめ、現在はマンチェスター・シティのフットボールディレクターになっている。その彼が、浦和時代にトレーニングで見せた姿勢に、一緒に練習していた私は目から鱗が落ちる思いだった。

 パスをつなぎなからポゼッションしていくトレーニングをしていた時、ミニゲーム形式で味方にパスをする局面で、チキはゴールが空いた瞬間、パスを出す素振りをして、アウトサイドキックでシュートを打ってゴールを決めた。

 ポゼッションの練習でそんなことをしたら、「練習にならないじゃないか」とコーチに言われるとこちらは考えていたから、「なにやっているんだ」と思っていたが、チキの考えは違った。「パスをつないでポゼッションするのは、ゴールを奪うためであって、得点できるチャンスがあるのにシュートしないのはおかしい」。それが、欧州のトップで生きてきた彼にとって当たり前のことだったのだ。