齋藤学は思った。「4万人のブーイングも、きっと自分のプラスになる」 (2ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 是枝右恭●撮影 photo by Koreeda Ukyo

 だから今も、チームメイトから食事に誘われたら、それもコミュニケーションを取る大事な機会だと思って、なるべく行くようにしています。シーズン序盤はACL(AFCチャンピオンズリーグ)があって、チームが海外遠征に行ってしまうこともあったので、そういうときには残っている若手選手たちと食事に行ったり、話す機会を持つように心がけてました」

 さすがに目標としていた5ヵ月とはいかなかったが、5ヵ月半という早期復帰だった。4月8日に行なわれたJ1第6節の後半32分、阿部に代わって齋藤は途中出場でピッチに立った。

「悠くんが体調不良になって、急遽メンバーに入ったんですよね。3月25日の練習試合に出て、その1週間前くらいからみんなと一緒に練習し始めたんですけど、楽しくて楽しくて仕方がないメンタル状態になれていたから、復帰戦もワクワクしていた」

 ただ、運命の悪戯(いたずら)か、それとも宿命なのか、奇しくも復帰戦の相手は、古巣・横浜F・マリノスだった。しかも舞台は、長年プレーしていた日産スタジアム。当然ながら、大ブーイングがスタジアムにこだました。

「まさか日産スタジアムで復帰するとは、さすがに想像していませんでしたね。移籍して苦しいこともありますけど、環境を変えることで、自分自身がまた変わっていくことも実感しているので、そこはポジティブに捉えたい。

 約4万人にブーイングされた経験も、きっと自分自身を成長させてくれると思う。リハビリしている間って、ホント、いろいろなことを自問自答するんですよ。でも、その期間も含めて、すべてがプラスになっていると思っています」

 そんな齋藤の目に、フロンターレのサッカーとはどのように映っているのか――。

「加入して真っ先に感じたのは、『止めて、蹴る』の質が本当に高いこと。試合に出ている人だけでなく、チーム全体として、そこの質が高い。だから試合でも、あれだけボールを回すことができるんだって、すぐに感じました。

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