J1神戸からJFLへ。田中英雄の移籍先にきた大久保嘉人からの電話
ベテランJリーガーの決断
~彼らはなぜ「現役」にこだわるのか
第3回:田中英雄(テゲバジャーロ宮崎)/前編
(第2回:高木和道(MIOびわこ滋賀)編>>)
今季からJFLのテゲバジャーロ宮崎でプレーしている田中英雄 練習が始まる45分前にグラウンドに到着し、バッグから歯ブラシを取り出して、歯磨きを始める。ヴィッセル神戸時代にはクラブハウス内のロッカールームに置いていた備品も、ここでは日ごとに使用する練習場が違うからだろう。練習に必要なスパイクや練習着なども含め、すべて自分で管理しており、車の後部座席がさながらロッカールームだ。
そうして身の回りの準備を整えると、最後に日焼け止めを念入りに塗る。それもそのはず、取材に訪れた5月上旬の宮崎の気温は28度。夏のような強い日差しが照りつけていた。
「あまりに日差しが強いので、こっちに来てから、日焼け止めが欠かせなくなりました(笑)。変化といえば、それくらい。グラウンドの大きさは同じだし、サッカーボールは丸いし、自分がやることも変わらない。それに、何と言っても元気にこうしてボールが蹴れるのは最高っす!」
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田中英雄が、13年間在籍したヴィッセル神戸に契約満了を告げられたのは、昨年12月上旬のこと。34歳という年齢を考えれば、不安に襲われてもおかしくないはずだが、それはなかった。
「家族は不安だったはずですが、僕自身は『また新しい場所で、サッカーができるな』くらいの感覚で、不思議と不安はなかった。移籍先が決まっていたわけでも、他チームからのオファーがバンバン届いていたわけでもなかっただけに、周りは『もっと焦れ』と思っていたはずですけど(笑)。
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