J1神戸からJFLへ。田中英雄の移籍先にきた大久保嘉人からの電話 (2ページ目)

  • 高村美砂●取材・文 text&photo by Takamura Misa

 でもこの世界、例えば再起不能の大ケガをして、1日で引退せざるを得なくなることもありますからね。少なくとも、僕はプロになったときからそう思ってきたし、だから毎日、悔いを残さないように過ごしてきた。

 そのおかげで、契約満了を告げられても、自分への自信が揺らぐことも、引退を考えることもなかったんだと思います。いや......正確には、自分だけは最後まで自分を信じたいって思っていたのかもしれません」

 そう考えられたのは、これまでのサッカー人生も自分を信じる先に拓(ひら)けてきたからでもある。

 鹿屋体育大学を卒業する際、あるチームから契約直前にオファーを取り下げられて行き場を失うなかで、ヴィッセル神戸のプレシーズンマッチに練習生として出場したことでプロへの道が拓けたときも。2013年のシーズン終了後、一度は契約満了を告げられながら、土壇場で再契約となった際も。

「常に100%の自分であることを怠(おこた)らなければ、必ず人生はポジティブな方向に転がる」と信じてきたからこそ、次のステップを踏み出すことに、恐れも不安もなかった。それは、今回も同じだった。

「現役選手である限り、いつかまたきっとどこかのグラウンドで会える。だからこそ、僕の中では引退する日まで、応援してくださったサポーターの皆さんともサヨナラするつもりはなかった。それもあって、ヴィッセルでの最後の公式戦となった天皇杯準決勝後もしんみりしたくないと、特に挨拶することなく、チームを離れました。

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