証言・福田正博。あの「何の意味もないVゴール」に至る屈辱のシーズン (7ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・文 text by Sato Shun
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 市原戦、平塚戦と連勝し、浦和は自動降格圏から脱出して順位は14位に上がった。チーム内も重苦しい雰囲気から少し解放されて、選手たちも「残り2試合勝って、残留するぞ」という前向きな姿勢を見せるようになった。

 サポーターたちの雰囲気も変わった。

 神戸戦までは「なにやってんだ!」「こんなんでいいのか!」といった罵声が飛び交い、チームにプレッシャーをかけていたが、次第に「どうにかしないといけない」といった空気に変わって、「(選手たちと)一緒に戦おう!」という一体感が生まれるようになった。

 そして迎えた第14節のヴェルディ川崎戦。終始リードする展開だったが、試合終了間際に追いつかれ、延長戦でも決着がつかず、2-2の引き分けに終わった。それでも、勝ち点1を拾って、福田は「残留への光が見えた」と思ったという。

「勝てなかったけど、引き分けたことで(勝ち点1を得て)、これでなんとかイケるかなと思った」

 川崎戦を終えたあと、チームはそのままJヴィレッジに向かった。ア・デモス監督は、重要な最終節を前にして、メディアなどすべてを完全にシャットアウトして、練習に集中したかったからだ。実際、選手たちも最終戦の広島戦に向けて集中して練習ができたという。

 そして、万全の準備を整えて、チームは試合の前日に浦和に戻り、ホテルに前泊した。

 いよいよ明日、広島に勝てばJ1に残留できる──が、福田の胸中は不安でいっぱいだった......。

(つづく)

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