証言・福田正博。あの「何の意味もない
Vゴール」に至る屈辱のシーズン (5ページ目)
そのとき、ペトロビッチがこう声をかけてきた。
「フクダ、ケガでもしたのか?」
福田は一瞬、言葉を失いかけたが、はっきりとこう返答した。
「いや、どこもケガはしていない。なぜベンチ外なのか、意味がわからない」
それに対してペトロビッチは、「なぜ(チームで)一番点を取っている選手が試合に出られないんだ!?」と言ってタメ息を漏らし、複雑な表情を見せた。
セカンドステージこそ10試合を終えて2得点だったが、ファーストステージで福田はチームトップの8得点を記録していた。外国人選手の感覚からすれば、結果を出している選手が優先されるのは当たり前。それだけに、ケガもしておらず、調子が悪いわけでもない福田が、スタメンでもなく、ましてベンチにもいないことがペトロビッチにはまったく理解できなかった。
ア・デモス監督は、福田の代わりに岡野雅行と大柴健二を2トップで起用。追加登録されたばかりのDFフェルナンド・ピクンやDF中谷勇介らを先発で使って、福田はベンチからも漏れた。
その試合、チームはガンバ戦に勝った勢いも失って、0-2で敗れた。試合後、対戦相手の指揮官である神戸の川勝良一監督が福田のもとにやってきた。そして、川勝監督はこう言った。
「点が取れる選手は限られている。俺は(ア・デモス監督が)なぜおまえを使わないのかわからないけど、ウチとしては、おまえが試合に出なくて助かったよ」
福田はこのとき初めて、ア・デモス監督との間に埋めようのない"溝"があることを感じた。
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