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理想のミシャ&現実の堀。
浦和レッズのアジア制覇は指揮官2人の合作 (4ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 しかし、この試合でFW興梠慎三は前線からの守備を怠らず、途中から左サイドハーフに回れば、時に最終ラインの位置にまで下がって相手のサイド攻撃に対応した。

 あるいは、MF柏木陽介もそうだろう。卓越したパスワークと周囲との連動で局面を打開する術(すべ)に長(た)けるこの司令塔にとって、その特長を出しづらい状況は苦しいものだったはずだ。それでも相手に執拗にプレスをかけ、本来は出し手であるはずなのに、限られたチャンスではカウンターの受け手となって相手ゴールに迫った。

 サッカー人たるもの、それぞれが理想とするスタイルを備えているはずだ。そこには譲れないこだわりもあるだろう。しかし、時にそれを捨て、現実に徹することも求められる。浦和の選手たちには葛藤があったかもしれない。それでも、アジア制覇という大きな目標に向けて一致団結し、現実路線を貫いた。

「ミシャだったらタイトルは取れなかったかもしれない」

 DF槙野智章はそう振り返る。

 たしかに、ペトロヴィッチ監督の攻撃スタイルは、強力なタレントを備えた準決勝の上海上港や、決勝のアル・ヒラル相手には破綻していたかもしれない。一方で槙野はこうも言う。

「堀さんだけでも取れていなかった。ふたりの指導が合わさった結果のタイトルだと思う」

 理想だけでは勝ち取れない。現実だけでも成り立たない。ふたりの指揮官がつないだ、10年ぶりのアジア制覇だった。

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