勝利の女神は消極的な川崎Fに
そっぽを向き、勇敢な浦和に微笑んだ

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 逃げる側には焦りと怯えの色が見え、追いかける側には余裕と確信が備わっていた。Jリーグ勢対決となったAFCチャンピオンズリーグ(ACL)準々決勝は、ホームで圧巻のゴールショーを演じた浦和レッズが見事な逆転劇で、2008年以来となるベスト4進出を決めた。

逆転勝利で喜びを爆発させるキャプテンの阿部勇樹(中央)逆転勝利で喜びを爆発させるキャプテンの阿部勇樹(中央) 川崎フロンターレのホームで行なわれた第1戦を1-3で落としていた浦和が苦しい状況に追い込まれていたのは間違いない。唯一の救いはアウェーゴールを奪っていた点だったが、その優位性も19分にDFエウシーニョに先制点を奪われ、あっさりと手放すことになってしまった。

 この時点で、最低でも3点を奪い延長戦に持ち込むか、4点以上を奪うことが勝ち上がりの条件となった。しかし、2点目を奪われてしまえば、そのシナリオは破綻する。攻撃的にいく必要があるなか、守備もおろそかにはできない。表裏一体の難題を抱えた浦和は、絶体絶命の窮地に陥っていた。

 ところが浦和の展開したサッカーに、焦りの色は微塵もにじんでいなかった。4-1-4-1の新布陣によるスタイルが手堅さを備えていたことがそう感じた理由で、バランスを崩してまでもリスクを取ることはせず、サイドを起点に丁寧に攻撃を組み立て、じっくりと得点機をうかがった。

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