勝利の女神は消極的な川崎Fにそっぽを向き、勇敢な浦和に微笑んだ (4ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 残り時間は20分。トータルスコアはまだ川崎Fがリードしていたものの、もはや川崎Fは立っているのがやっとの状態。同点、そして逆転されるのは、時間の問題だった。

 84分、柏木のパスからFWラファエル・シルバがトータルスコアをタイに戻すゴールを叩き込むと、その2分後には森脇の柔らかいクロスをFW高木俊幸が合わせて、つい逆転に成功。稀に見る逆転劇は、こうして完遂されたのだ。

 結局のところ、サッカーは点を獲るスポーツである。その本質を捨て、守りに入り、自分たちの戦いを見失った川崎Fが自滅した、と言える。そして、その隙を見逃さなかった浦和は、ビハインドをものともせず、数的にも精神的にも優位に立ち、90分を通して試合をコントロールし続けた。勝利の女神は消極的な姿勢の川崎Fにそっぽを向き、冷静かつ勇敢に戦い抜いた浦和に微笑んだのだ。

「(相手の退場は)イエローでもおかしくはなかったし、かわいそうだったと思うけど、すべてを含めて俺らの前向きながんばりを、神様が見ててくれたのかなと」

 ロマンティックな柏木の発言も、案外、的を射ているのかもしれない。

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