あれから5年。松本山雅・松田直樹
ゆかりの店は看板だけが残っていた (4ページ目)
「同じポジションの選手に憧れてんなら、サッカー選手なんかやめちまえ!」。松田はそう言って吐き捨てたこともある。彼には白か黒しかなかった。その生き方が小気味よかったのだ。
いつか、あるいは、すでに、松田は忘れられつつあるのかもしれない。しかし、彼はそんなことに文句を言うほど、器の小さい男ではなかった。「しょーがねぇーじゃん」。きっと、鼻で笑うだろう。その軽やかさに、男の憎めなさがあった。愛される理由があった。
行きつけの店を訊ねるため、市内から40分以上も歩き続けたとき、なぜかひざが痛んだ。松田は晩年、ひざを庇いながらプレーしていた。
「おい、まだ忘れんじゃねぇよ!」と、カラカラと笑う声が聞こえた気がした。
4 / 4