あれから5年。松本山雅・松田直樹
ゆかりの店は看板だけが残っていた (3ページ目)
しかし詳細は消えても、人間としてぶつかり合ったときの火花のようなものは残っている。むしろ時が経つにつれ、その実感は増す気がする。燃え尽きた者はずるい。
「俺は他人を認めないでここまでやってきた」。松田はそう信条を語っていた。
「練習でも、"今日死んでもいい"というところまで追い込んで、いつも自分に問いかけていた。"今日、グラウンドであなたは一番でしたか?"って。サッカーで妥協はしたくなかった。試合になれば、"ぶっ飛ばしてやる"と相手を睨んだよ。俺にグレーはない。白か黒か、戦いの中でアドレナリンが出てくると、無敵になれた」
こんなセリフを颯爽と口にできる選手が、いったい何人いるだろうか? その言葉には命のほとばしりがあった。
<松本が逃したJ1昇格。プレーオフをどう戦うべきだったのか?>
その答えを聞いてみたいが、それはかなわない。松田はこの世にはいないのだ。つくづく、早く逝き過ぎた。
しかし彼のことだから、「相手をリスペクトして戦え!」なんてことは言わなかったに違いない。松田は勝負においては非情だった。「自分が勝者としてリスペクトされる」という傲岸さで挑んでいた。
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