2016年MVP、中村憲剛という「サッカー人」を創った3人の恩師 (5ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

「きっと健さんもダメもとで、フロンターレに話をしてくれたんだと思います。『どこにも拾ってもらえなかったら、どこかで働きながらプレーすればいい』って言われていましたから。本当に人生綱渡りですよね。ただ、どうしようもないってときに誰かが助けてくれる。今振り返ってみても、いつ綱が切れてもおかしくなかったと思います。でも、これだけは言える。自分でもバカだなって思うくらい、サッカーが好きだったんですよね、マジで(笑)」

「年の離れた友人みたいなもんです」という佐藤とは、今でも付き合いがある。「自分の活躍は喜んでくれていますけど、恩返ししているつもりはないですね(笑)」と言えるところに、ふたりが積み重ねてきた関係性が滲(にじ)み出ている。

 そんな中村は、「プロになってからも出会ったすべての指導者に感謝している」と話すが、プロサッカー選手として大きな自信を得ることができたのは、この人に出会ったからだ。2006年、中村を初の日本代表へと招集したイビチャ・オシムである。

「それまでの自分は、年代別カテゴリーの代表にすら選ばれたことがなかったので、オシムさんに自分の(サッカー)人生を肯定してもらえた気がしました。それも、あの世界(日本代表として戦うこと)に初めて呼んでくれたのがオシムさんだったことが、ことさらうれしかった。オシムさんに認めてもらえたことは、未だに自分の名誉であり、誇りです」

 さらに饒舌になった中村は、「同じ空気を吸って、同じ考えでサッカーをして、練習や試合ができただけでも、ものすごい価値があった」と、オシム監督と触れ合った日々について回想する。

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