ツエーゲン金沢の選手御用達。お店の願いは「加賀の野菜で走り回って」 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

 2016年1月、ツエーゲンは寄付を募ってクラブハウスが完成した。施設面は充実し、栄養のケアも万全になった。選手が町の食堂に気安く訪れる回数は、これから減るのかもしれない。メンタルの問題があるなら、専門のトレーナーに相談することができるのだろう。「今の若手選手は、あまりそういう食堂に行かなくなっている」というクラブ関係者の声も聞いた。時代の流れには抗えない。

 しかし、流れの中でも残るものはきっとある。

「来年はどんな選手が来るのかね?」

 おばちゃんは常連客のツエーゲンファンと、世間話に花を咲かせていた。そのやりとりは孫の誕生を待ち望んでいるかのようだった。

<加賀野菜をたくさん食べて、グラウンドを走り回ってほしい>

 おばちゃんは祈る。金沢という磁場で精をつけ、人生を生き抜いてほしい、と。

 万が一、野菜が苦手なら、一撃必殺のカツカレーが出番を待っている。大盛りの白飯に熱々の肉厚のトンカツが睥睨(へいげい)するように座り、そこにしこたまカレーがかけられる。「食べられるもんなら食べてみろ!」というボリュームである。

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