佐藤寿人が語る「広島愛」。
ではなぜ名古屋への移籍を決断したのか? (3ページ目)
名古屋からオファーをもらったとき、他でもない自分が、まだ選手としてやれると信じていることを、思い出させてもらったんですよね。ケガを抱えているわけでも、身体が痛いわけでもない。試合に向かうモチベーションを失っているわけでもない。まだ自分のなかには、ギラギラしているものもある。今だって、試合に出場できなければ、『なにくそ』って思うし、監督と握手はしますけど、どうしても悔しい気持ちが上回ってしまうから、ちゃんと目を見ることすらできない。それなのに......自分で自分の引き際を決めてしまっていたのかなって」
それでもなお、今や生まれ故郷よりも、育った町よりも、地元だと感じる広島への愛は強く、思いは深かった。
「どこかに出掛けて広島の駅や空港に戻ってくれば、『帰ってきたな』って思う。サッカー選手としての一面もありますけど、その前に僕もひとりの人間であり、広島人として、この町で生活できる喜びがある。
それは、息子たちが中学校のサッカー部やサンフレッチェのスクールに通っている姿を見ることもそう。子どもたちが、自分の好きなクラブのユニフォームを着て、がんばっている姿を見られる。こんなにも純粋にうれしいと思えることってない。そんな何気ない日常に幸せを感じることができるのも、自分がここ、広島でがんばってきたからなんですよね」
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