【恩田社長の600日】クラブライセンス制度がFC岐阜に残したもの (4ページ目)

  • 恩田聖敬●文 text by Onda Satoshi


 このようにすべてを巻き込み、約3カ月走り回った結果、約16万人の署名を集めることができました。その署名を後援会会長とともに細江岐阜市長にお持ちしたところ、市長は大勢の取材陣を前に「署名について大変重く受け止めます。実現に向けて努力したい」と明言されたのです。これをもって、岐阜市がついに動き出すのです。

 ゴーサインが出てからは、とにかく時間との戦いでした。行政は入札、契約、工事開始とそれぞれのプロセスに一定期間が必要となり、議会承認が必要な案件は議会日程に合わせてしかスケジュールが組めず、お互い焦りながらの進行でした。

 ライセンスの基準の条文の厳密性と柔軟性を、岐阜県・岐阜市の職員は気にしていました。たとえば、「......はクラブが優先的に使えるものであること」の"優先的に"とはどういった状況を指すかです。

 FC岐阜としては、クラブハウスを使わせていただく以上はより良いものを求めたいと考えていました。一方で、税金によって整備をするため、FC岐阜以外の利用者の利便性にも十分な配慮が必要です。そんなそれぞれの思惑を整理するために、Jリーグのライセンス事務局の方を岐阜にお招きして、膝を突き合わせる時間を設けました。

 その席でさまざまな確認はできましたが、民間企業の施設ではなく、FC岐阜のように行政の力を借りて、設備面の整備をせざるを得ないクラブのことを考えると、現状のライセンス制度の条文は行政泣かせのものであると言わざるを得ません。図面や内部の整備で合意形成を取るのにかなり苦労しました。

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