通算ゴールを161に伸ばした大久保嘉人が語る、「今は不安しかない」 (2ページ目)
大久保という男は無邪気に見えるかもしれないが、ピッチでは計算高く、狡猾であざとい。
FC東京との試合、同点弾となった1点目も抜け目がなかった。パサーである中村憲剛と呼吸を合わせ、鋭く裏に抜ける。マーカーよりも一歩速くコースに入り、タックルできない位置にコントロールし、ゴールを叩き込んでいる。なにより、予備動作で勝っていた。側にいた左サイドバックの選手と駆け引きしていたように見えるが、そうではない。逆サイドの右サイドバック(右センターバックも)のラインを見切っていたのである。それゆえ、一見オフサイドなのだが、綺麗なオンサイドだった。
2度目の同点弾の契機になったPKも、大久保は巧妙だった。シュートモーションに入りながら、まず後ろから詰め寄った敵選手を滑らせる。ただその時点で4~5人に囲まれ、シュート角度もないと判断。背後から来た米本拓司をあえて誘い、飛び込ませ、倒される。最も効率のいいプレーをはじき出し、PKを誘っている。焦って思慮なく蹴り込む、という愚を犯さない。その頭脳は一瞬のうちに最高のプレーを選択していた。
「ターン一つとっても、どっちに回るか読めない。右だと思うと、左にくるりと回るし。信じられないほど素早いから」
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