通算ゴールを161に伸ばした大久保嘉人が語る、「今は不安しかない」

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki  高橋学●写真 photo by Takahashi Manabu

FC東京戦で2得点。通算記録を161に更新した大久保嘉人FC東京戦で2得点。通算記録を161に更新した大久保嘉人 4月16日、味の素スタジアム。この日のFC東京戦で、大久保嘉人(33歳、川崎フロンターレ)は自らが持つJ1通算得点記録を161ゴールに更新している。二重、三重に囲む記者を前に、彼は淡々と語った。

「(2点目の)PKは外すことしか考えていない。その方がリラックスできる。決めて喜んでいる姿とか考えたりしたらダメ」

 自ら奪ったPKの場面を、Jリーグ3年連続得点王はそううそぶいた。自分を作っているわけではないだろう。

「若い頃と違って、今は不安しかない。ゴールできないんじゃないか、って思うと、眠れなくなる。だから、必死にシュート練習するけど。それでも不安になるよね」

 大久保は私に向かって、しばしば「不安」を語る。強気に見える彼の細心さ。それは彼の本性の一部だろうが、全体は捉えどころがない。

「自分がストライカーか、と言われたら、正直、呼ばれ方なんてどうでもいい。そういうのはなんにも思わないし、考えてないかな。ストライカーと呼びたいならそれでもいい」

 彼は自らをストライカーとしてすら括(くく)っていないのである。

 正体不明さ。それが、大久保がJリーグで得点を取り続けられる理由なのだろう。

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