指揮官の過ちと、遠藤航の加入で生まれた浦和レッズの「理想形」

  • 神谷正明●文 text by Kamiya Masasaki
  • photo by Getty Images

 決して順調な滑り出しとは言えなかった。

 浦和レッズは今季、AFCチャンピオンズリーグ初戦のオーストラリア・シドニーFC戦(2-0)、Jリーグ開幕戦の柏レイソル戦(2-1)と連勝したものの、ACL2戦目の韓国・浦項戦(0-1)と、Jリーグ第2節のジュビロ磐田戦(1-2)では立て続けに苦杯をなめた。シドニーFC戦、レイソル戦も勝ったとはいえ、内容は今ひとつだった。

 原因は、指揮官の思い切った"改革"にある。ここ数年、不動のユニットとなっていた3バックにメスを入れたのだ。とりわけ目を引いたのは、これまで3バックの左が定位置だった槙野智章のリベロ起用である。

 槙野は、地上戦においても、空中戦においても、安定した強さを誇る。Jリーグではトップレベルのディフェンダーと言っていいだろう。ミハイロ・ペトロヴィッチ監督は、その槙野を最終ラインの要、中央に配置することで、懸念材料となっていた守備力の向上を図った。だが、この配置転換が少なからず問題を引き起こすことになった。

 槙野本人のパフォーマンスは悪くなかった。左ストッパーからリベロに移っても、1対1の強さは相変わらず際立っていた。また、もともとチームを引っ張っていくキャラクターだったこともあって、周囲とうまくコミュニケーションを取りながら、ラインコントロールも率先して行なっていた。リベロから繰り出されるロングフィードも、レッズの重要な攻め手のひとつだが、そのキックの精度も高かった。リベロとしての役割を、槙野はそつなくこなしていた。

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