3強を抜いた川崎フロンターレが見せる、最もモダンなサッカー (5ページ目)

  • 木崎伸也●文 text by Kizaki Shinya
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 切り替え時の守備だけでなく、相手のビルドアップに対しての規律ある守備も完成度が高まってきた。

 今季、4−4−2の陣形にコンパクトに並び、ひとりひとりがパスコースにいつでも顔を出すことができるため、相手は怖くてトライできない。追いかけ回す守備ではなく、イタリアが得意な「待ちのゾーンディフェンス」だ。もちろん前述したように、相手のパスコースが限定できたら、近くにいる選手は迷わずボールを奪いに行く。プレスのメリハリにセンスがある。

 名古屋戦後の会見で、風間監督はこう語った。

「攻守一体で、ただ追いかけ回す守備をやっている訳ではない。それと、プレーが速くなっていますけど、走行距離は長くないんですよね。そういう意味ではすごく合理的にやっている。もっと自分たちの攻撃のグレードを上げれば、もっと楽に守備ができる。相手がボールを持っても、逆に追い込むことができるということをやっていますが、これはまだまだひとりひとりの個人戦術が高くなっていかなければならない。みんな、練習ではかなり理解しているので、試合の中でどんどん吸収していってもらいたいです」

 MF大島僚太、DF奈良竜樹、MF中野嘉大など、主力にU-23日本代表候補が多く、リオ五輪の影響は避けられない。相変わらず失点が多く、クロスやシュートで振り回されて組織が崩れたときに、元の陣形に戻るのが遅いという課題は見られる。

 それでも現在の“しぶとさ”を考えると、3強(広島、ガンバ大阪、浦和レッズ)とともに優勝争いに絡む資格は十分にあるだろう。少なくともJリーグの中で、ハリルホジッチ監督が認める湘南とともに、最もモダンで、最もヨーロッパに近いサッカーをフロンターレが見せてくれることは間違いない。

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