名将への階段を昇るサンフレッチェ・森保一監督のマネジメント術 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki 松岡健三郎●撮影 photo by Matsuoka Kenzaburo

 現役時代、主に広島で活躍した森保監督は、U-20日本代表やアルビレックス新潟などでコーチを務めたことはあったが、監督経験はまったくないまま、2012年から古巣の広島を指揮。それでも、前任者のペトロヴィッチ前監督(現浦和監督)が築き上げたベースを生かして"勝てるチーム"をつくり上げた。就任1年目のシーズンでJ1初制覇を成し遂げたのをはじめ、在任4年で3度も広島にJ1優勝をもたらしている。

 なかでも今季は、とりわけ指揮官としての手腕が光ったシーズンではなかっただろうか。

 シーズンオフに高萩洋次郎(FCソウル)、石原直樹(浦和)と、ふたりの主力を失ったところからのスタートとなった今季は、徹底して選手たちの競争意識を高め、ポジションを争わせた。

「公式戦はもちろんだが、練習にもお金を払って(見にきて)もらえるような激しい練習をしよう」

 そんな言葉で選手たちを鼓舞してきた森保監督は「しのぎを削ってポジション争いをしてきたことが、結果につながっている」と語る。

 果たして広島は、多くの選手が自信を持って「誰が出てもチームとして力を出せる」と言えるほどに、層の厚いチームになっていた。

 だが、どんなに選手層が厚くなろうとも、それを生かし切れなければ意味がない。森保監督は選手起用という点においても巧みだった。Jリーグチャンピオンシップ決勝で広島に敗れたガンバ大阪の長谷川健太監督は「(森保監督は)チームマネジメントがうまい」と言い、こんな表現で敵将を称えている。

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