常勝アントラーズの大黒柱。小笠原満男が示す「プロの矜持」

  • 佐野美樹●文 text&photo by Sano Miki

 10月31日、ナビスコカップ決勝。試合終了のホイッスルが鳴ると、小笠原満男は足もとにあったボールを軽く蹴り上げて、大きく息をついた。派手なガッツポーズを見せるでもなく、その姿からは喜びよりも、3年ぶりのタイトル獲得に安堵する思いがにじみ出ていた。

今季も圧倒的な存在感を示していた鹿島の小笠原満男今季も圧倒的な存在感を示していた鹿島の小笠原満男 鹿島アントラーズの、2015年シーズンの幕開けは惨憺(さんたん)たるものだった。4年ぶりの出場となったAFCチャンピオンズリーグ(ACL)初戦で、ウエスタン・シドニー・ワンダラーズに敗戦を喫すると、そこから、開幕したJリーグの試合を含めて5連敗。ホームのカシマスタジアムは、しばらくの間失意の状態が続いていた。

 ようやく勝利を手にしたのは、シーズン開幕からおよそ1カ月後の4月3日、Jリーグファーストステージ第4節のサガン鳥栖戦だった。しかし、その後も勢いに乗ることはなく、ACLはグループリーグ敗退。Jリーグでは、優勝争いからは大きく離れた中位を彷徨っていた。

 その頃、チームの精神的な支柱である小笠原が、よく口にする話題があった。それは、若い選手たちの"おとなしさ""覇気のなさ"である。

「まず『俺にボールを寄こせ!』っていうのがない。何か言われると、シュンとしてしまうし......。(若い選手は)もっと生意気で、やんちゃなぐらいでいいんだけどな」

 事実、シーズン序盤に何度か取材に訪れた際、その練習風景はあまりに静かだった。活気がなく、どちらかと言えば、重苦しい雰囲気が感じられ、これがあの"常勝軍団"鹿島なのか、と目を疑ったほどだ。

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