2015.07.11

『育将・今西和男』 次週より連載スタート!

  • 木村元彦●文 text by Kimura Yukihiko
  • photo by Nikkan sports

プロローグ
J2岐阜社長時代の今西和男。Jリーグ、日本 サッカーの発展に多大な貢献をした一人
 今、なぜ今西和男を書くのか。
 
 久保竜彦が言った。

「引退のあいさつに行ったんです。平和通りにある喫茶店で待っておられたんです。これで現役を辞めます、自分がプロになってから本当にお世話になりました、これからは次の仕事を探しますが、もし何かサッカー関係のものがあれば気にかけて下さい、今後ともよろしくお願いします、と告げて、そのまま失礼するつもりだったんです。報告ってそういうもんやと聞いていたし、仕事は頼みましたけど、おいおいどこかで連絡をもらえればいいな、とそう思っていたんです」
 
「そうしたら、ですね」と今でも驚きを隠せない表情でドラゴンは続けた。

「わかったと言うて、すぐにそこから携帯電話で、いろんなところへ連絡を取り始められたんです」
 
 あの元日本代表の久保が引退したんです。何かそちらでお手伝いできるような仕事は無いでしょうか? 次から次へと自分の人脈を惜しげもなく使って、その場で久保の就職先を決めてしまった。それが廿日市のスポーツクラブで、やがて久保の現役復帰(広島県社会人リーグ廿日市FC)への道に繋がる。

「あんなに選手のことを考えて、世話をしてくれる人はおらんですよ。今西さんに出会っとらんかったら、勉強もせんかったし、人とも話さんような感じやったし、自分はとっくにダメになっとったでしょうね」  

 後に「FWとしての潜在能力は間違いなく日本一」と多くの外国人監督から高い評価を得た久保であるが、高校時代は全く無名だった。そんな自分をサンフレッチェ広島に呼んでプロにしてくれた。入団してからも、何も考えずに好きなものを食べて、好きなことだけしていた生活を改善してくれた。話の仕方や人との接し方を教えてくれた。「あの人のおかげで自分は今、あります」