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鳥栖・豊田陽平「監督主導のチームはうまくいく」 (4ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by AFLO

 今シーズン、チームが調子を落としていた16節の川崎フロンターレ戦後、豊田は監督に呼び出されたことがあった。

『どうした? がむしゃらさが足りないね。トヨらしく、もっとチームを引っ張っていく姿を見せて欲しいよ』

 奮起を促された豊田は一瞬、当惑を覚えつつも、その思いはすぐに使命感に代わった。“チームのために走ろう”と心を鬼にしようと決めた。そこには、ユン監督の下で結果を出してきた信頼関係があった。だから、決然とした面持ちで彼はこう約束した。

『分かりました。もし次の試合で点を取れなかったらスタメンを外される覚悟でやりますよ』

 背水の覚悟だった。そして迎えたセレッソ大阪戦で、彼は貴重な得点を決めた。豊田はその瞬間を少しおどけるように振り返った。

「0-0のまま後半に入って、ゴール前でフリーになってパスが来れば押し込むだけという瞬間を迎えました。“早く来い、早く来い”って祈ってましたよ(笑)。GKもDFも自分に気づいていましたから、祈るような気持ちでした。それでようやくボールがきたときに少し浮いていたのもあって、一回で仕留めきれなくて。前に向かってこぼしたので、そのまま押し込めましたが、あれは少し緊張しましたね」

 決戦の前に監督と賭けをし、一か八かで勝つ、そうした切迫したやりとりが、彼を鍛えてきたのだろう。

<立ち止まっていては、勢いは衰退して“滅ぶ”だけ>

 ユン監督から受けた薫陶が、彼の中には息づいている。自身初となるJリーグ王者を目指し、豊田は立ち止まっていなかった。

 しかしその数日後、彼は唖然とする知らせを受ける。

「この度、2014年8月7日付けでユン・ジョンファン監督との契約を解除しましたのでお知らせいたします」

 クラブからはリリースが出され、首位での監督交代に選手間では動揺が走った。直後のサンフレッチェ広島戦、FC東京戦とチームは2連敗を喫している。なんの影響もなかったと言えば、嘘になるだろう。
(続く)

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