セレッソ大阪に加入するディエゴ・フォルランの「意外な素顔」 (2ページ目)
フォルランは周りの選手の能力を爆発させるスイッチになる一方、自らの才能も爆発させる。まるで「誘爆力」だ。前線の攻撃タッグではそれが顕著で、ビジャレアル時代はファン・ロマン・リケルメ、アトレティコ時代はセルヒオ・アグエロ、ウルグアイ代表ではカバーニ、ルイス・スアレスと才能を共鳴させている。フォルランの誘爆力が選手の能力を引き出す結果、彼が在籍するチームの成績は良いのだ。
そのプレースタイルは、性格的にストライカーにありがちな狭量なエゴイズムに囚われない点も関係しているかもしれない。
「僕は教会では感謝をしても、何かをお願いしたことはないんだ」
カトリック教徒であるフォルランはそう証言しているが、その言葉ひとつにも、彼の人生観が表出している。
その人格形成は家庭環境に基盤があるだろう。1974年W杯に出場した父は厳格で、「献身」を人生の訓辞として与えられ、「身を挺し、人のために尽くせ」と教え込まれた。また、母からは「自分を律しなさい。自分の世話をできないような人間は、他人の世話もできません」と厳しく躾けられたという。さらに、12歳の時に交通事故で姉が車椅子生活を強いられるようになったことで、フォルランの生き方の作法は確立されていった。
その実直な性格から考えて、大金を稼ぐためだけに極東の国に来ることは考えられない。34歳の決意は漲(みなぎ)っているだろう。
2013年10月にウルグアイで南米各国に向けて出版された『Palabra de Hombre』(11人の男を描いたオムニバスノンフィクション)の中で、フォルランはこう語っている。
「20年以上もフットボールの世界で生きてきて、そろそろ自分が"選手として搾られてきた"というのは感じている」
それはフィナーレに向かう言葉として聞くと、なにやら意味深長である。
フォルランと時間を共有することで多くの選手が感化されたように、セレッソでは柿谷曜一郎、杉本健勇、山口蛍、扇原貴宏、南野拓実ら若い選手がカタルシスを得るに違いない。とりわけ前線でコンビを組むことが予想される柿谷は、至高のパートナーを得ることになった。
2 / 3