最大のヤマ場。優勝を目指す浦和が、因縁の相手・川崎との大一番へ (2ページ目)

  • 小齋秀樹●取材・文 text by Kosai Hideki photo by Getty Images

 このとき、サポーターに対して深々と、繰り返し頭を下げていたのが柏木陽介だ。後日、彼は不甲斐なさを噛みしめながら「大勢の人が期待してくれているのに、その期待に応えられていない」と口にしている。

 川崎との2度目の対戦は、9月7日のナビスコカップ準決勝第1戦。この試合、浦和は2点をリードしながら、DFふたりが負傷交代を余儀なくされたこともあり、2-3と逆転された。また、この第1戦の前後には、横浜FMとFC東京を相手にそれぞれ3失点を喫してもいる。

 これまで、ペトロビッチ監督とレッズの選手たちが目指すサッカーをひと言で表せば、「2点取られても、3点取るサッカー」だった。しかし、この失点の多さに、攻撃的なサッカーを標榜するチームのムードも守備重視へと傾いた。ただそれでも、その後のゲームで先制しながら追いつかれる展開が続いてしまう。

「自分たちは守りきるチームではない」

 選手たちが意見を述べ合い、そんな結論に至ったのは10月初めのことだ。これ以降、彼らの志向はより現実的なものへとシフトしていったように思う。3-2で勝利するような打ち合いよりも、守備に重きを置く。ただし、守りに守って1-0で逃げ切ることもしない。自分たちの攻撃的サッカーを捨てることなく、守備にも今まで以上に注力する。そんな現実的な落としどころを言葉にすれば、「2-0、あるいは2点リード後に失点しても2-1で勝つサッカー」だろう。

 路線をシフトした後の10月12日のナビスコカップ準決勝第2戦、チームは今シーズン3度目となる川崎との対戦を迎えた。

 この試合の浦和は、柏木の言葉を引用すれば、「プレスを掛けながら、ボールを奪ってからの2次攻撃、3次攻撃」で川崎に攻撃の糸口をつかませない「理想的な守備」を展開。80分に興梠慎三がゴールを挙げた後も、攻守に走りきって1-0で勝利をつかんでいる。

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