【名波浩の視点】8年ぶりのリーグ2位。ジュビロの力は本物か? (2ページ目)
一方攻撃も、FWの山崎亮平と金園英学、中盤の新戦力として期待されるペク・ソンドンらを負傷などで欠きながら、ここまではうまく機能している。特に、今季チームに復帰した松浦が秀逸な働きを見せている。昨季、アビスパ福岡では1シーズン通して活躍し、まさに彼のチームという存在感を示してきた。その自信が今季、そのままピッチ上で表現されているように思う。
そして何より、前田と駒野友一という、チームの中心であるふたりの奮闘ぶりが光る。ともに、例年はスロースターターのイメージがあるが、前田はナビスコカップを含めて5試合ですでに3得点を記録し、欧州行きの話が出ていた駒野も体が仕上がっていて、開幕戦から高いパフォーマンスを発揮。彼らが好スタートを切ったことで、前述の松浦を含めて山田大記や小林裕紀、山本ら次世代を担う面々もうまく引っ張られて、いいリズムが生み出されている。
そうした現状で、さらに何かを求めるとすれば、高い位置から自分たちでボールを奪いにいく、チームとしての作業だ。レイソル戦でも、後半は長く押し込まれる時間帯が続いた。そうなると、体力的にもしんどくなるので、その状況を打破するためにも、前線でボールを奪って攻撃につなげる形がほしい。本当に強いチームというのは、そこからのショートカウンターだったり、相手に引かれたときの遅攻だったり、そのメリハリができている。勢いだけでなく、上を狙えるチーム力をつけるためにも、必要な戦術と言えるだろう。
そういう意味でも、ジュビロはまだチームとして完成されているわけではない。10段階で2くらいの仕上がり。それは監督も承知しているし、今出場している選手のうち、完全なレギュラーと言えるのも、前田、駒野、山田、藤田といった数人。彼らは1年通して計算できる選手だが、他の選手たちはまだまだ未知数。好不調の波があって、パフォーマンスが落ちると消えてしまう選手も多いだけに、現段階で過大評価するのは禁物だろう。
今は、勝ち続けているから個々のモチベーションが高く、チームとしてもピーンと気持ちの糸が張っている状態。一度試合に負けて、その糸が切れたとき、ガクッと落ちずに戦えるかどうか。そのときに、チームの真価が問われると思う。
著者プロフィール
名波 浩 (ななみ・ひろし)
1972年11月28日生まれ。静岡県藤枝市出身。1995年、ジュビロ磐田に入団し一時代を築く。日本代表では10番を背負い初のW杯出場に貢献した。引退後は、ジュビロ磐田のアドバイザーを務めるとともに、テレビ朝日『やべっちF.C.』などサッカー解説者として活躍
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