個の力が融合。なでしこジャパンの武器は組織力だけではない (2ページ目)
攻守ともにコンパクトさとハードワークが求められるなでしこのサッカー
ボランチというポジションは、ストライカーのようにゲームを決めるわけではないが、チーム全体のリズムをつくる役割を担う。ボールをちらしたり、ボールを引き出すことで起点となって攻撃のリズムを決める選手であり、守備のときはDFラインの前でプレスをかけて相手の攻撃を遅らせるなど、攻守に高い能力が求められる。
ボランチがワンタッチでパスを入れてからいったん落として、前、後ろ、前と、ジグザグにボールを動かしたり、あるいはサイドを変えるなどしてリズムをつくり、速いテンポでボールを回せるかどうかが、ひとつのポイントになる。
そういう意味で、なでしこジャパンの中盤は、メンバーがある程度固定されていないと全体的なリズムが壊れるリスクが生じて、ギクシャクする可能性もある。個人ではなく、組織として、チーム全員が連動するサッカーをしているので、そうしたリズムや連携が生命線ということだ。
そうした点を考えると、強豪国と対戦できる貴重なテストの場であったアルガルベカップで、佐々木則夫監督はもっと試したいことがあったのだと思う。田中明日菜をボランチ⑦、有吉佐織をサイドバック②⑤、宇津木瑠美をCB④で起用するなどしていたが、佐々木監督が「勝負にこだわりすぎた」と言っていたように、もう少し見てみたい選手がいたのかもしれない。
オリンピックの登録選手数は18人。これは、ワールドカップの23人よりも少ないため、バックアップのメンバー選考のためにも、いくつか組み合わせを見ておきたかったということだろう。
そのアルガルベカップでは、国内組のコンディションがいまひとつだったので、4月からのリーグ開始に合わせて徐々に上がってきてほしいところだ。それに対して、シーズン中の欧州組の調子はかなりよかったように見えた。とくにドイツ組の永里優季⑩、熊谷紗希③のふたりは、アメリカやドイツの選手を相手にしても互角以上にできていたし、個の力という点ではほとんど問題がなかったように思う。
アルガルベカップは結果こそ準優勝だったが、アメリカ、ドイツという強い相手とできたのはよかったと思うし、こうした強豪国とあたって、どこまでやれるかを試せたことは非常に意味があった。最大の収穫はアメリカに勝ったことだろう。大きな勝利だったと思う。
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