サッカー日本代表がイングランド戦で見せた守備戦術 ワールドカップ本番の強豪相手にも成功するか (4ページ目)
【強豪相手に主導権を握るのは厳しい状況】
両チームが前半と同じメンバーでスタートした後半も、基本的な構図は変わらなかった。イングランドは両サイドバックが前半よりも高く開いた位置に立つという変化はあったが、ボールを保持しながらも決定機には至らず。逆に日本は、後半立ち上がりにカウンターから2度のチャンスを作っている。
ゼロトップが不発に終わったトゥヘル監督は、59分の段階で4枚代え。本職のドミニク・ソランケを起用して谷口彰悟の周辺でプレーさせることで多少の深みをとったが、基本的には戦術的というよりも、各選手のプレータイムを管理することに重点を置いた選手交代だった。その後、71分に2枚、83分にCBのふたりを代えて迫力満点のパワープレーで日本ゴールを脅かしたが、最後まで得点を奪えずに終わっている。
こうして歴史的勝利を飾った日本だが、W杯本番を見据えた強化試合としては、収穫と課題を見ることができた。
収穫は、前からのプレスがハマらない時のミドルゾーンの守備と、そこからのカウンターアタックの精度だろう。できればハイプレスからのショートカウンターが理想だろうが、強豪との試合でそれができない場合の戦い方としては、一定の手応えを得たはずだ。
ただし、今回は相手がゼロトップという特殊な戦術だったことを考慮すれば、深みをとられた試合でどこまで最終ラインを高く保てるかは未知数。その意味では、自陣の深い位置で5バック化した時に、両WBを務めるアタッカーの高さを含めた守備のディテールに太鼓判を押す状況にはないと言えるだろう。
また、主導権を握るという部分においては、まだW杯で上位を狙う強豪との対戦では厳しい状況にあることもはっきりした。これは残された時間で簡単に解決できる問題ではないので、本番では理想と現実のどちらで割りきるのか、指揮官の判断に委ねられる。
いずれにしても、このイングランド戦でW杯本番の戦い方はほぼ固まった。よほどのことがない限り、前回大会のような本番目前の方針転換はないだろう。
その前回大会では、主導権を握られるなかで強豪に逆転勝利を飾って16強に進出したが、この4年間、日本は主導権を握りながら勝ち上がることを目標としてきた。果たして、今回は前回よりも一歩前に踏み出したスタイルで目標達成を目指すのか。それとも、再びリアクションサッカー主体で目の前の勝利を目指すのか。
W杯本番で森保監督がどのような選択をするのか、要注目だ。
著者プロフィール
中山 淳 (なかやま・あつし)
1970年生まれ、山梨県出身。月刊「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部勤務、同誌編集長を経て独立。スポーツ関連の出版物やデジタルコンテンツの企画制作を行なうほか、サッカーおよびスポーツメディアに執筆。サッカー中継の解説、サッカー関連番組にも出演する。近著『Jリーグを使ってみませんか? 地域に笑顔を増やす驚きの活動例』(ベースボール・マガジン社)
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