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サッカー日本代表史上最高のストライカー 釜本邦茂は何がすごかったのか 都並敏史&後藤健生の証言 (4ページ目)

【強烈な努力をした人】

都並 釜本さんは、メディアではあまり饒舌に語ってこなかったじゃないですか。それがたぶん損をしていて、意外と本来の実力が伝わってこなかった理由なんじゃないかと僕は思っています。

 金田さんとふたりでお話を聞いた時はいくらでもしゃべってくれたんで、もうびっくりしたんですよ。細かすぎて。「こんなにこの人サッカーに細かいんだ」と思って。軸足のヒザを曲げてシュート打つ。そのための筋トレの機械がないから、自体重をかけてその姿勢を作る練習をしていたとか。

後藤 人ごみをすり抜けていったりとか、電車でもつり革につかまらないでずっとツマ先で立ってバランス感覚を鍛えていたとかね。

 左足のシュートがうまくなるために、ご飯を食べる時に左手でお箸を持って食べたんだって。

都並 そんなこともやったんですか。徹底的ですね。

後藤 うまくなるために。点を取るためにはなんでもするんだよね。

都並 サッカーがうまくなる人って、モノマネなんですよ。今の子どもたちが三笘薫のドリブルをマネするように、釜本さんはスタンレー・マシューズのドリブルをマネしたそうです。自分の体を傾けて相手を寄せておいて反対へ出ていくだけなんですけど、釜本さんはやっぱりそれだけを徹底的に極めるからタイミングがよくて、一瞬だけ右足を振れる時間が作れる。

 マシューズのフェイントからエウゼビオのシュートなんですよ。でも、それを本物にしている。この人、死ぬほど練習してきてこれができているんだろうなというのがわかるすごさがあります。

 あの、ブレる人ってわかるんですよ。対峙していて「あ、これはシュート打つ前にブレちゃうな」って。でも釜本さんのプレーはネジが締まりまくっているというか、一つひとつの動きがキチっとしていてブレない。あれば絶対に練習量なんですよね。

後藤 みんな努力で獲得した強さなんだよね。ヘディングにしても左足にしても。

都並 そうです。たぶん努力した人は、それを細かく説明できるんですよ。

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