サッカー日本代表で輝く4人のアタッカー 中村敬斗の決定力を生かした「ダブル偽9番システム」は可能か (3ページ目)
【ダブル偽9番システムはちょっと見てみたい】
左ウイングとしてのドリブルもすばらしい。ボールの運び方がしなやかで、相手につっかけていきながら一瞬で逆をとる。右足アウトでのカットインが得意だが、カットインとみせて縦へ振りきる抜き方もあり、さらに深い切り返しも持っている。
ボールタッチの巧みさだけでなく身体操作に優れていて、抜ききらなくてもコースが空けば正確なキックでシュートを決め、決定的なパスを送ることができる。
三笘も縦とカットインの両方を持っているが、縦にぶっちぎるスピードが脅威で、それをちらつかせながらカットインを使う。一方、中村はカットインの脅威をみせて縦を使う。似ているけれどもメインの武器は逆。このふたりに交互に仕掛けられたら、守る側は堪ったものではないだろう。
ただ、中村と三笘のダブルウイングは基本的に3バックでなければ使えない。対戦相手に強力な右ウイングがいる場合、ボール保持で日本が劣勢になれば中村や三笘が対峙しなければならず、そこが弱点になってしまう危険がある。3バックでダブルウイングにするにしても、得点がどうしてもほしいケースに限定される。
鋭い槍を4本持っていても同時には使えない。ただ、まったく無理かと言えばそうではない。中村の得点力を生かしてトップ下に配置すれば、槍は3本使える。さらに久保をトップ下、中村をセンターフォワードに置けば、4本勢ぞろいは可能なのだ。これならば守備型のSBを使った4バックを維持したまま、4本の槍が並ぶ。
ただし、これには条件があってポストプレーヤーを必要としない戦い方ができなければならない。つまり、ボールを保持してロングボールに頼らずに攻め込めること。
パリ・サンジェルマンはウスマン・デンベレ、ブラッドリー・バルコラ、フビチャ・クバラツヘリアのウイング3人を並べている。突破も得点もできる3本の槍だ。ロングボールをほぼ使わずに押し込める保持力があるから、可能になっている。フランス代表はデンベレ、バルコラにキリアン・エムバペ、マイケル・オリーセの槍4本だ。
ダブル偽9番システムの実現性は低いかもしれないが、久保、伊東、三笘、中村が交互に左右から仕掛けていく壮観は、ちょっと見てみたい誘惑にかられる。
著者プロフィール
西部謙司 (にしべ・けんじ)
1962年、東京生まれ。サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスに。「戦術リストランテ」「Jリーグ新戦術レポート」などシリーズ化している著作のほか、「サッカー 止める蹴る解剖図鑑」(風間八宏著)などの構成も手掛ける。ジェフユナイテッド千葉を追った「犬の生活」、「Jリーグ戦術ラボ」のWEB連載を継続中。
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