サッカー日本代表で輝く4人のアタッカー 中村敬斗の決定力を生かした「ダブル偽9番システム」は可能か (2ページ目)
【抜群の決定力】
アジア予選突破を決めた後のサウジアラビア戦、日本は予選で初めて無得点に終わった。三笘は負傷でベンチ外。ウイングバックの左は中村が先発した。右は今予選の売りだったアタッカーではなくDFの菅原由勢。
立ち上がりから中村は対面のサイドバック(SB)を翻弄、次々とチャンスを作り出す。右も菅原の際どいクロス、久保の変幻自在のドリブルで圧倒していた。しかしゴールは決まらず、後半には中村が抑えられるように。対面のDFが交代し警戒が強くなっていたこともあるが、もともと5バックだったことが大きいかもしれない。
5バックは当然横へのスライドは速くなり、中村はほとんどタッチライン際でボールを受けていた。中村は縦への突破も持っているが、得意なのは右足アウトを使ったカットインだ。カットインからのシュート、パスは絶品。
しかし、5バックの相手DFがより早くアプローチできるのでスペースがタッチライン際しかなく、そこから独特の深い切り返しのカットインを使ってもシュートやラストパスを狙うにはゴールまで遠すぎた。かわしても後方へ押し戻される格好になってしまうので、ゴールに直結するプレーにならなかった。
もう少し内側でプレーするか、対面のDFにつっかけていける距離があれば、中村の長所は発揮できただろう。
中村はおそらく日本代表のなかで最もシュートがうまい。ゴール前での冷静さ、裏へ出るランニングのうまさ、クロスボールにタイミングよく合わせられるポジショニングが優れていて、何と言ってもキックが正確なのだ。足のスイートスポットでボールをとらえて振りすぎない。力まずに強いシュートを飛ばす。GKが防げないコースへ蹴る能力がある。
キックの精度とともに、おそらく位置感覚が優れているのだと思う。
バスケットボールの選手は、振り向きざまにシュートして得点することが普通にできる。シュート自体は手を使うので精度は期待できるのだが、コートの狭さもあって自分と目標の位置関係を感覚的に把握できるようだ。
サッカーでもよほど余裕がある場合以外は、しっかりゴールを見てシュートすることはない。位置関係を感覚的に把握する能力が必要である。
中村はドリブルでシュートコースが空いた瞬間に蹴って、正確に隅へ入れる。ボレーやダイレクトシュートでも、瞬時にGKが防げないコースへシュートする。国際Aマッチ6試合連続ゴールが示すように、決定力が図抜けている。
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