サッカー日本代表でもっとも重要なのは森保一監督のマネジメント力 福田正博が今後のチームづくりを展望 (2ページ目)
【監督のマネジメントにもっと目を向けてほしい】
その一例が長友佑都の招集であり、長谷部誠コーチの招聘だ。ベンチ入り選手数が増えたメリットを活かし、選手としての能力に加え、代表選手たちに寄り添える存在として長友佑都を招集してきた。そして選手との距離感が近く、海外で長く活躍した実績を持つ長谷部がいることによって、試合に出られなくて不満を抱える選手の気持ちが軽くなった側面がある。
森保監督自身も、スタッフを信頼しながら厳しくすべき点では自らが前に出る。予選中にある選手がピッチ上でふさわしくない振る舞いをした時、森保監督はそこを許すとチームがまとまりを欠くと判断し、「中心選手であっても代表チームを去って構わない」という強い覚悟を持って選手と対峙した。普段は温厚で誠実な人柄で、つねに私利私欲なく「日本代表のため」「日本サッカーのため」を考えている監督だからこそ、厳しさを前面に打ち出した時に選手へ思いの真意が伝わるのだ。
森保監督に対しては、バーレーン戦後に批判も出た。先発した守田英正が故障を再発させ、三笘薫もコンディションを崩したからだ。W杯出場権をほぼ手中にしていたなかで無理して使う必要はなかったという意見だが、これは結果論にすぎない。
スポーツは決められる時に決めなければ、その後に勝ち点を手にできる保証はない。なにより守田にしろ、三笘にしろ、日本代表に自覚と責任を持って臨んでいることを、軽んじていないだろうか。
彼らの気持ちをもっとも尊重しているのは、森保監督だ。予選を通じて中心選手として日本代表を牽引してきた彼らをリスペクトしているからこそ、選手の「出られる」という判断を尊重したのだ。逆にW杯出場が決まる大一番にスタメンから外されたら、選手たちは監督の気遣いを理解はしつつも、出られなかったことへ不満を抱えるだろう。トップ選手というのは、そのくらい自身の存在価値に大きな自負を持っているものである。
監督の仕事というのは、采配面に目が向きがちだ。しかし、限られた時間しかない代表活動のなかで、選手たちの気持ちをコントロールしながら継続的にチームをつくりあげていくことのほうが圧倒的に難しい。このマネジメントこそ監督たちが重きを置くものであり、多くの人たちにもっと理解してほしいと思う。そして、そうした目線でこれからの日本代表の活動を見ると、新たなサッカーの魅力に触れられるはずだ。
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