検索

サッカー日本代表の構造的問題 ひたすら守るサウジアラビアに拙攻の山を築いた理由 (4ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【狭い3バックの間隔】

 伊藤の行動範囲は狭いように見えた。パッと見は、サボっているようにも見えた。なぜ、相手の1トップに対しCB3人で構えるのか。最終ラインは終始、人がダブついていた。その余剰分が、前方での人数不足を招き、サイド攻撃に悪影響を及ぼしている。ピッチを俯瞰すれば、この構図は次第に鮮明になっていった。

 さらに言えば、CB3人の間隔が狭かった。両ウイングを押し上げる構造になっていなかった。77.6%の支配率を誇るわりに中村、菅原の位置取りは低かった。

 CB3人の間隔が狭くなった理由は以下のとおりだ。

 3人の真ん中で構える板倉滉は常時、相手のワントップ、マルハン・アルサハフィと1対1になっていた。伊藤、右CBの高井は当然、板倉のその状況が心配になる。3人も置きながら、肝心な箇所は1対1というこの現実。3人のCBが相手FWひとりに手を焼く構図に間違いの元がある。

 センターは2バックで十分であるはずなのに3人を据える。森保監督が心配性なのはわかるが、その過剰防衛は効果的ではない。その歪みがピッチの各所、特に攻撃面に押し寄せているのだ。

 なぜ森保監督はこの3-4-2-1を採用するのか。2018年7月に就任して以来、きちんと語った試しは1度もない。「臨機応変」「賢くしたたかに」などという言葉で誤魔化している。この日もお茶を濁すような言い回しで、本質を語ろうとしなかった。

「私は極度の心配性だから」「敗戦を誰より恐れているから」と言うならわからないではないが、それでも、相手が1トップで向かってきたとき、中央は1対1になる3バックの構造的問題は解決されない。W杯本大会に向け、不可解さは募るばかりだ。

著者プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

フォトギャラリーを見る

4 / 4

キーワード

このページのトップに戻る